焙煎の妙味

「私はブレンドで。」
よく喫茶店で耳にします。
ブレンドとは、ブレンドコーヒーのこと。
コーヒーのブレンドは数種類のコーヒー豆を混ぜて、それぞれのコーヒー豆では出せない
新しい味を作り出す技能です。
コーヒーのブレンドにはいくつかの目的があります。
目的の一つが、
数種類のコーヒーを混ぜて相乗効果で各原料コーヒー豆にはない素晴しい個性をもった風味を作ること。
これが一番の高等技術だと思います。個性の素晴しいブレンドコーヒーの材料には少なからず個性的なコーヒーを選ばなければなりません。個性的なコーヒーはそれゆえに他の材料となるコーヒーと喧嘩します。最悪の場合優れた個性の潰し合いに陥ります。スペシャルティコーヒーがなかった時代に素晴しく個性的なコーヒーを作り出そうとするならばこの方法でした。
もう一つ、
風味の弱点を複数の原料コーヒー豆で補填しあい、標準レベルの風味を作ること。
世の中のブレンドコーヒーの中で一番多いのはこれだと思います。スペシャルティコーヒー以前のコーヒーには好ましい風味と欠点ともとられる風味が混在していました。その好ましくない部分を打ち消すためのブレンドがこれです。好ましくない風味はある程度隠せますが、より素晴しい風味に変化することはほぼありません。シビアなコスト管理が要求される大量生産のコーヒーにはよくつかわれる手法で、低価格の原料でいかに良いものを作るかを追求する方法です。
あともう一つ、
コーヒーは農産物なので同じ味のコーヒーが毎年現れるということはほぼ不可能なので、
原料コーヒー豆の配合を少しずつ変えて安定した同じ味を毎年作ること。
私のお店、ラヴニールのハウスブレンドはこの目的のもとに作っています。以前のコラムで説明したスペシャルティコーヒーは特に良くも悪くも個性的です。ラヴニールではハウスブレンドがなければ、例えば1年間の期間をあけて来店されたお客様が同じ味のコーヒーを飲むことが不可能になってしまいます。またご進物などで以前に贈って好評だったからまた贈りたいという使い方が出来るコーヒーがなくなってしまいます。いつ来ても味わえるコーヒー。そういう意味でこの目的でハウスブレンドを作っています。
現在ラヴニールのブレンドはハウスブレンド1種類だけですが、
今後、
数種類のコーヒーを混ぜて相乗効果で各原料コーヒー豆にはない素晴しい個性をもった風味を作ること。
を目指したブレンドコーヒーも作っていきたいという意欲が高まって来ています。これはいつ来ても飲めるいつものブレンドではなく、旬の材料を使った限られた期間だけ楽しめる限定的なブレンドです。味のイメージは出来ているのですがあたりを付けて配合してもなかなかイメージ通りにはいかないもので….。しばらく試行錯誤を繰り返すことになりそうです。思い通りのブレンドが出来るようになったら、またその過程もご報告します。

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焙煎のお話

営業中に焙煎をしていると
「焙煎でコーヒーの味が変わるんですか」と聞かれることがあります。
答えは……「変わります。」
厳密に言うと焙煎前の処置の段階から変わります。
焙煎のお話
具体的に何が変わるかというと、
①風味の持続力
焙煎されたコーヒーの断面を拡大してみると蜂の巣のよう(ハニカム構造といいます)になっています。この蜂の巣の部屋に風味が蓄えられています。短時間の急な加熱によりその壁が破壊されると風味の抜けが早くなると共に、酸化(不快な酸味の発生)も早くなります。
②風味の発達
コーヒー豆は必要なところで十分な熱を得られなければ、繊維も開かず風味も発達せず渋く青臭く香りも弱いものになります。
熱のかけ方と、焙煎時間のコントロールが焙煎の要といえます。
③焦げの発生
焼き始めから強い火力をかけると外側だけ焦げてしまい後口の悪いコーヒーになります。
④欠点豆・異物の混入
これは焙煎前の処置の話ですが、コーヒーは農作物なので傷ついたもの、豆の中に虫が侵入しているもの、カビが発生しているもの、栄養不足等で十分に成熟していないもの、枝や果肉、時には石や他の穀物などが混入している場合があります。これらを一緒に焙煎してしまうと心地よい香りを阻害したり、食感にざらつきを感じたり、不快な苦味が発生したりということになります。焙煎前に異物やダメージを受けた豆を取り除くことをハンドピックと言います(焙煎後にも煎りムラを取り除くため行います)。スペシャルティコーヒーでは混入はずいぶんと少なくなりましたが、焼いてしまうと分からなくなるダメージもあるので重要な工程の一つです。
では、良い焙煎がなされた豆とそうでない豆との見分け方はというと外見では分からないことが多いです。購入後の風味の劣化のスピードや、後口に不快感が残らないかどうかなどに気をつけてチェックするのがよいと思います。

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コーヒーサイフォンの効用

サイフォンは私がカフェ業界に入って以来、約15年間メインで使用している器具です。
セミオートエスプレッソマシンが日本で普及する以前は最も華やかなコーヒー抽出器具だったのではないでしょうか。
人間に得意・不得意があるように、コーヒーの抽出器具はもちろんどんな道具でも長所・短所があります。
サイフォンはフラスコ内の湯の加熱膨張を利用したコーヒー抽出器具で、バキュームコーヒーメーカーとも言われます。
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サイフォンの長所
・香りの抽出に優れている
高温抽出のため香り成分の気化が促進される
フラスコからカップに注ぐ瞬間の香りは他の抽出器具にはない素晴しさがある
・コーヒーの個性がはっきりと抽出される
エスプレッソの凝縮された感じとはまた違いペーパードリップのコーヒーの風味のエッジを鋭くした感じになる
・短時間で抽出が完了する
サイフォンで長時間の抽出工程を取ると逆に味わいが悪くなる
短時間で効率的に抽出できるようにコーヒー豆の挽き具合と粉の使用量の調節、かつ抽出作業の手早さが必要
サイフォンの短所
・苦味や雑味が強く抽出されやすい
コーヒー豆の挽き具合や抽出時間の調整を失敗すると著しく風味が悪なる
・器具全体ののほとんどがガラスのため取り扱いに注意が必要
・フラスコ内の湯が突沸し飛散することがある
以上はあくまで私の使用感です。。
お店で使うにはスピードもあり演出性もあり、ラブニールでは常時約10種類のコーヒー豆をご用意していますが
注文後お待たせせずにお好みの豆を抽出できるというメリットもあります。

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ラヴニールの思いについて書いたwordデータが出てきたので。。

以下1年ぐらい前に書いた取材用のwordデータです。


お店のこだわり
コーヒー業界はサードウエーブの時代と言われています。簡単にいえばそれぞれのコーヒーが持つそれぞれのユニークさを愉しむ時代です。農作物であるコーヒーのユニークさとは、品種、産地の風土気候、栽培環境、精製方法、輸送環境など様々な要因が作り上げます。故にコーヒーも従来の原産国がどこかという情報に加え地区指定、農園指定がスタンダードになってきました。
とここまではよく雑誌などで目にしますが、その先の工程も実はコーヒーにとって重要な要素なのです。その先の工程とは焙煎で、その先が抽出です。サードウエーブの時代に入り焙煎は素材(豆)のユニークさを素直に表現させることが重要になってきました。抽出法にも同じことが言えます。
カフェラヴニールでは店内に焙煎機を設置し、少量ずつ必要な分だけ農園もしくは生産地区指定のコーヒー生豆を焙煎します(大量生産・大量消費の時代をファーストウエーブと言います)。カフェではその豆をご注文いただいてから挽いて主にサイフォンもしくはエスプレッソで提供しております。ご要望によりフレンチプレス、エアロプレス、ペーパードリップでもお出ししております。上質なコーヒーをご来店いただくお客様に召し上がっていただくために届いた生豆の状態から抽出まで管理することが1杯のコーヒーの完成度を高めると考えるからです。
岡本出店の理由
現在のカフェラヴニールがある岡本の街には実は数回しか訪れたことがありませんでした。生まれ育った神戸に店を移したいと考えたとき、神戸らしい街並みを探しました。三宮から南へ下った神戸港開港以来の倉庫街’磯上’、酒蔵の街’御影’などを歩きました。
そんな中、カフェ・お菓子・パンの街イメージを持っていた岡本の街を改めて歩くと、石畳が敷き詰められた街並みに心惹かれました。イメージ通りカフェが多い街でした。しかし自家焙煎店はなく、なんだか残念な気持ちになったことが今でも思い出されます。それは岡本の街で自家焙煎をすることになる動機づけになりました。パンやお菓子が焼き上がる香りに包まれたこの街にコーヒーの香りもプラスしたらなんて素晴しいだろう。そんなことを思いました。
提供したいサービス
「生簀のあるお寿司屋さんのようなコーヒー店」
新鮮なのもを新鮮なうちに、素材にあった調理方法でおいしいものを食べさせてくれる、ネタはもちろんシャリやタレにも手抜きなしのお寿司屋さんのような珈琲店であり続けたいと思っています。
それが15坪足らずの小さな店舗に焙煎機を店内に設置し、ミルを3台置き、3連のエスプレッソマシンと5連のサイフォンテーブルを置く理由です。
社会貢献
職業を通じて社会貢献をしたいという思いがあります。私の毎日を支えてくれる大切な業(ワザ)がコーヒー作りです。この技を社会のためにも活かしたいという願望は長く抱えていましたが、2012年3月、東日本大震災を受けての復興支援バス(岡本商店街主催)で初めて想いは形になりました。私はドリッパーとサーバーを3セットと小型業務用ミル1台、復興への願いを込めて焙煎したコーヒー豆を持ってバスに乗りました。行先は宮城県気仙沼市の仮設住宅。集会所で淹れたてのコーヒーを振る舞いました。コーヒーという飲料は、遠く離れた神戸からやって来た私たちと仮設住宅の皆さんと心を通わせる心の潤滑剤になってくれました。
教育について
神戸国際調理製菓専門学校で喫茶学という講座の外部講師をさせていただいています。調理師・製菓衛生士の免許取得と関連技術の向上を目指す学校なので、喫茶学はいわば副教科ですが、料理や菓子にはコーヒーが(喫茶学なので紅茶も教えていますが…)付き物です。食後の口直しや、スイーツをおいしくする相乗効果を期待して出される場合が多いのですが、実際に食後のコーヒー、紅茶に知識を持ちこだわっているお店はそう多くありません。個人的に飲食したレストランやパティスリーで残念な思いをしたことが少なからずあるのです。飲料についても知識と技術を習得すればコストを懸けずとも料理や菓子の価値を高めることが出来る方法はあるわけで。専門学校を卒業して料理、菓子の道に進んでいく生徒たちに伝えたいことがたくさんあるのです。
材料のとしての可能性
嗜好飲料としてコーヒーを愉しむということのほかに、コーヒーの材料としての可能性にも興味があります。例えば製菓材料として。香りづけにつかわれることが多いですが、ではどのような香りをもたらすためにはどの生豆をどのように焙煎し、どのように抽出液を作るか。
例えばカクテル材料としてならベースの酒を引き立てる風味を得るためのコーヒーをどう選定するかなど。興味は尽きません。
機器について
カフェラヴニールには焙煎機1台、開発に携わった新式ガスサイフォンテーブル1台、ミル3台、3連エスプレッソマシン1台が設置しております。どれもお客様にコーヒーを愉しんでいただくための大切な道具です。私の道具選びは「こんな風につくるためには」というところから考えます。機器には長所と短所があるもので、、作りたいものの“こんな風に”にその長所の焦点があっているものを選んで使っています。
失伝した技術を取り戻したい
柔道と空手道を稽古していたことがあります。もともとはどちらも徒手格闘の技術。組技と寝技が発達したのが柔道で、打撃技が発達したのが空手道です。空手道を稽古することが柔道の上達に生かされたり、柔道を稽古することで空手道の上達に生かされたりすることがよくありました。そんな経験から・・・お客様をおもてなしする→飲食物を供じる→飲料を供じる→コーヒーを供じる・・・というような系譜を考えることがあります。私はバーテンダーが使うシェイク、紅茶店が使うダブルクーリングなど異業種の方の技術をおいしいコーヒーを作るために日常的に使用しています。
視野がコーヒーについてだけになると見えないことが系譜を遡ることで見えてくることがあるからです。幸いにも私には相談しあえる異業種の技能者の友人が多くできました。モノづくりという共通項があるため、専門的な話も興味深く語り合えます。
岡本の街は、神戸にはめずらしく業種様々な個人商店があります。お店どうしの交流がどこか懐かしく、1軒1軒が街のコンシェルジュの役割を担っています。カフェは多くに人が集まる場所です。岡本の街の楽しみ方などもご案内できればと思っています。岡本のマスコットキャラクター「石だたみ君」のドリップバッグを2012年より製作しており、街を知ってもらうきっかけとして当店及び岡本の物販店で販売しております。お土産ものもホンモノを提供したいと思っております。

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ドリップスタンド-店外での実用性-

カフェ ラヴニールがある神戸岡本では8月はイベントが多い月です。
先日は岡本ビアガーデン。
6つの岡本の飲食店がブースを出してのイベント。ラヴニールはこのイベントで初の試みとして、ペーパードリップのコーヒーをバイオーダーで提供しました。今週末は岡本サマーフェスティバルがあり、先日のビアガーデンで感じた問題点を改善していこうと考えています。
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ペーパードリップのオペレーションについての問題
屋外では1m80㎝の長机を使用することが多く、この限られたスペースドリッパーは3つを使いまわすのが妥当という前提です(大量に持ち込むのもありですが衛生管理が大変です)
・連続抽出の効率化
前回ビアガーデンでは、ドリッパーとサーバーの間の空間が温度低下の原因になると考えて、ドリップスタンドは使用しませんでしたが、抽出後サーバーから外したドリッパーの始末に困りました。かえって場所を使ってしまい、限られたスペースの中にデッドスペースが増えました。
【解決策】
ドリップスタンドの仕様。穴にドリッパーを装着するタイプでなく仕切りなしのパイプ式を使用することで使用済みのドリッパーをスライドさせてそのまま湯切りする。
抽出→湯切りをドリップスタンドの上で繰り返せば省スペースに。
・湯切りの問題
これは諸説ありますがペーパーフィルタを使用した抽出ではドリッパーに注いだ湯を最後まで(カップに)落とさないという方法があります。特にこの方法の場合ドリッパーに残っている湯の始末は重要なポイントになってきます。またすべての湯を抽出しきる方法の場合でも使用後のドリッパーから滴垂れは起こります。濡れた作業台を拭く作業もその回数が増えると大変です。
【解決策】
同上
・非水平の修正
野外では水平を保つことが困難です。デコボコの地面の上にそのまま長机という場合がほとんどです。水平を維持できなければどんな熟練者でも正確なコーヒーの抽出は困難です。
【解決策】
アジャスター付属のドリップスタンドを使用することで長机上で水平を保つ。
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こんな感じで改善を繰り返しながらイベント出店やセミナーなどを充実させていこうと考えています。
実店舗での営業が中心だったラヴニールにも心強い外販隊ができました。
これからもよろしくお願いします。

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