おいしいコーヒーの作り方

お菓子作りをされる方が、コーヒーに興味を持たれて
どうしたらおいしいコーヒーを淹れられますか?と
聞きに来られることがあります。
着目点が淹れ方の場合がほとんどですが、
例えばお菓子を作るときに使う粉や卵がとんでもなかったら
おいしいお菓子が作れますか?と返すと、
あっ、材料か!!
となります。
お客様においしいコーヒーはどうやって淹れるのですか?
尋ねられると
コーヒーのおいしさ=材料(生豆)の品質+焙煎の適切さ+抽出の技術
とお答えします。
受験合格点=英語の得点+国語の得点+数学の得点
みたいな感じです。
おいしいコーヒーを淹れるのは
1教科だけ力を入れて勉強しても合格点には至らないことの似ていると思います。

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コーヒーの風味の共通項

他店で買い求めたコーヒー豆を気に入って、
「●●(原産国)ありますか?」と
来店されるお客様があります。
例えば
「キリマンジャロ(タンザニア)ありますか?」
と尋ねられた場合に取り扱っていなかったとします。
通常は
「お取り扱いがないのですがケニアいかがでしょう。
地理的にも近く風味もよくにていますよ。」
とおすすめします。
この場合キリマンジャロとケニアの共通項は同じアフリカ産というところです。
しかし注意しなければいけないのがどんな焙煎度合のキリマンジャロを他店で買い求められたかです。
もしも気に入っているコーヒーがキリマンジャロの深煎りであれば、店頭にあるケニアの中煎りをおすすめするのは間違いな場合があります。
多くの場合、産地由来の風味よりも深煎りにした時の焙煎由来の風味のほうが支配的になることが多いのです。
この場合
「アフリカではなく南米産になりますがコロンビアの深煎りはいかがでしょう」
と香りを嗅いでいただきおすすめします。
この場合の風味の共通項は焙煎度合となります。

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おいしいコーヒーをください

よくお客様に
「おいしいコーヒーをください。」
もしくは
「おすすめのコーヒーをください。」
と言われることがあります。
私は
「お好みの風味はございますか。」
とお客様に尋ねます。
多くのお客様はそこで
「えーっと….。」
会話が続かなくなってしまいます。
そこでお客様がふだん召し上がっているコーヒーのことや、ご家庭での抽出方法などをお聞きし、おすすめすべきコーヒーを選びます。
お店でご用意しているコーヒーはすべておいしいコーヒーの要件にかない、またすべてがおすすめです。
コーヒーも含めて嗜好品の愛好者は「違いが分かる人」と呼ばれます。
では違いが分かるとは….分かる=分類することができる能力を有するということだと思います。
コーヒーに関するご質問をお客様からいただいたときに最初に栽培地域によるコーヒーの風味の大まかな分け方をご説明します。
コーヒー豆の栽培地域は大きく3つに分けて中南米、アジア、アフリカに分けられます。
例えば中南米は軽い口当たりでナッツのような香ばしさがある。アフリカはフルーツのような香りと明るい酸味が特徴。アジアはコクがありどっしりとした味わい。など。
栽培地域で大まかに好みを選んでいただいた後、原産国選び、精製法方選び、焙煎度合選びと続いていきます。
お客様の好みに合った風味のものを選んでいただきます。
私はおいしいコーヒーの要件に見合うものを作るのがお店の仕事、もちろんお手伝いはいたしますが、おいしいコーヒーを選ぶのはお客様の仕事と考えています。
コーヒー屋に限らず店主の好みばかりを押し付けられていてはお客様は堪りません。。
そこでラヴニールではコーヒー豆をお買い上げいただいている方対象に概ね月に一度「珈琲通養成講座」という無料のセミナーを行っています。
これはコーヒーに関する知識を深めてよりコーヒータイムをより愉しいものにしていただくためのセミナーです。また消費者の知識の向上がコーヒー業界全体のレベルの底上げにつながることも期待しています。セミナーは約2時間、内容を掘り下げて行っていますが、ちょっとしたご質問であればお店にいらしたときにお気軽にお声をお掛けいただければと思います。
今後は先程触れた、私の考えるおいしいコーヒーになり得る要件についてや、ご家庭での抽出方法についてもコラムにまとめていこうと考えております。

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嗜好品と日用品

最近スペシャルティコーヒーショップを冠するお店が増えてきました。
私が初めてスペシャルティコーヒーという言葉を聞いたのは確かアメリカ・シアトルから
スターバックスコーヒーが神戸にやって来た時だったと思います。
何か特別な感じはしましたが、何が特別ののかよくわからなかったことを覚えています。
では、スペシャルティコーヒーとは何でしょうか。
実は国際的にはっきりとした定義があるわけではありません。
以下はSCAJ(一般社団法人日本スペシャルティコーヒー協会)のスペシャルティコーヒーの定義です。
“消費者(コーヒーを飲む人)の手に持つカップの中のコーヒーの液体の風味が素晴らしい
美味しさであり、消費者が美味しいと評価して満足するコーヒーであること。”
から始まり、以降それを実現するための要件が続けられています。http://www.scaj.org/about/specialty-coffee
SCAA(アメリカスペシャルティコーヒー協会)では既定の採点フォームにより生豆及び
焙煎豆を評価して基準点数以上の得点を得たものをスペシャルティコーヒーと呼んでいます。
これは鑑定技能を認められたカッパーと呼ばれる有資格者が採点にあたります。
ヨン様が先日取得したQグレーダーとは、その鑑定技能者の資格です。
私のお店、カフェラヴニールではスペシャルティコーヒーを
「生産地域の気候や土壌、生産者が作り出すユニークな風味特性を愉しむ新しい嗜好品のカテゴリー」
と定義しています。
従来の「苦い」「酸っぱい」「重たい」「軽い」で表現されたコーヒーとは違い、それぞれのコーヒー豆の個性に由来するチョコレートやフルーツ、ハーブやスパイスのような風味を愉しむ事が出来ます。またその年のそのコーヒーという一期一会の面白さもあります。
原産国だけでなく生産地域や農園と収穫された範囲を狭めていけばその個性をより強く感じられることになります。
コーヒーでこんなことを言っても少し分かりにくいのですが、
身近なお米に置き換えると
①日本産米、②新潟県産米、③新潟県魚沼産米、④新潟県魚沼地区○○さんが作ったお米
とならべるとどれを買って食べたてみたいかのイメージがわくのではないでしょうか。
それに対してコマーシャルコーヒーとは、均一性を目指した一定レベルの維持を目指したコーヒーのこと。指定されるのは大きくは原産国とその国の基準の等級です。等級とは主に粒の大きさや、栽培地の標高の高さで決まります。毎年毎年同じような味わいという安心感があります。
均一性の追求を目指したコーヒーなのでコモディティコーヒーとも呼ばれています。
(ブルーマウンテンやハワイコナなどは付加価値型コーヒーとしてプレミアムコーヒーと呼ばれています)
スペシャルティコーヒーとコモディティコーヒー、目指すところこそ違うものですがどちらが正しいということはないと思うのですが違うカテゴリーとして認識されておらず消費者の間では混同されているのが残念です。
煙草に置き換えると、産地と製法にこだわった葉巻と自動販売機で並んでいる紙巻きたばこが同じカテゴリーで認識されている感じです。
日用品と嗜好品それぞれの良さを認識して愉しむことが、賢く豊かな暮らしの一つの手段ではないかなと思います。

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嫌われ者の酸

特に日本ではコーヒーの持つ「酸味」は嫌われ者です。
ラヴニールでも、酸味のないコーヒーはありますかとよく聞かれます。
多くの日本のコーヒー愛飲家にコーヒーの酸味は毛嫌いされています。
舌には慣れた物を好ましく感じ、慣れていないものは異物とみなす性質があります。
多くの日本のコーヒー愛飲家の舌は酸味の強いコーヒーに慣れてはいません。
逆に世界的にみて高評価されているコーヒーはと言うと、酸味が華やかで際立つものが選ばれています。(前回コラムに書いたスペシャルティーコーヒーというカテゴリーでの話です)
日本ではなぜ酸味のあるコーヒーは嫌われ者なのでしょうか。
以下は私の考察になりますが、理由を挙げます。
①日用品ゆえの悪印象
日本ではコーヒーは嗜好品というよりも日常品という形で定着したように思います。
日用品のコーヒーは大量生産されます。大量に流通するため価格競争が厳しい商品となります。したがって製造者のコスト管理はシビアになります。コーヒーの焙煎は深煎りにしようとするほど時間がかかり、燃費も高くつきます。製造者としては浅煎りの方がコストを抑えられるわけです。安価なコーヒー=浅煎りで酸味があるという印象付けがされた原因かもしれません。
浅煎りコーヒーの特徴としては酸味が強く苦味が少ないのが特徴です。もうひとつの特徴としては素材(コーヒー生豆)の長所も短所も抽出液に現れやすいということです。大量生産されるコーヒーの原料となるような豆は雑味と言われる不快な風味が多く、特に浅煎りコーヒーでは雑味を感じやすくなり飲用時の悪印象にも繋がりました。
②品質が劣化酸味と混同
コーヒーは焙煎から時間が経つにつれ酸化により、品質が劣化します。香ばしさはツーンとした酸っぱい臭いに変わり、抽出液を口に含むと刺すような刺激があります。
よっぽどのことがない限りコーヒーを飲んで食中毒を起こすことはないので、消費者も飲食店も含めてコーヒー焙煎豆の鮮度管理はいい加減なものでした。
そのいい加減に鮮度管理されたコーヒーを飲まされた時に感じた負のイメージが、「酸味」という言葉と結びついて苦手意識を生んでいるのかもしれません。
③深煎りコーヒーこそ嗜好品という文化
②で挙げた浅煎りコーヒーは大量生産の安価なコーヒーという印象がついたために、スペシャルティコーヒーが入手できなかったころの自家焙煎店には何らかの差別化が求められました。そこで登場したのが時間をかけてしっかり焙煎した深煎りコーヒーや、炭火を熱源に同じく深煎りにした炭焼コーヒーです。これを大手ロースターが作る浅煎りの大量生産のコーヒーに対して、付加価値のある商品として打ち出しました。それが功を奏し深煎りコーヒーこそがおいしいコーヒーという印象付けが成されました。
深煎りコーヒーの特性としては原料のコーヒー豆が持つ雑味をある程度破壊することが出来ます。酸味も同時に破壊されます。浅煎りコーヒーに比べ焙煎にかかる時間も燃料のコストも増えることになるので、手間とコストをかけた上質なコーヒーという印象になります。私も焙煎士の一人として先人の努力に敬意を表します。
今回は以上三つの理由を挙げました。
では現在日本でも手に入るようになった新しい嗜好品のカテゴリーであるスペシャルティコーヒーに照らし合わせて先程あげた3つの事柄を考えてみます。
①スペシャルティコーヒーは先物市場ではなくオークションで取引されることが多く、材料自体に原価がかかるため浅煎り=省コストという図式は当てはまりません。
またスペシャルティコーヒーの大前提はクリーンカップと言って雑味がないことが根底にあります。故に浅煎りをして雑味が強く出てしまうということはありません。
②スペシャルティコーヒーとはいえ新鮮さを失って酸化したものは不快な味わいになります。鮮度管理が行き届いているかどうかを気をつければ、酸化による不快な酸っぱさは回避できます。スペシャルティコーヒー、コモディティコーヒーに関わらず鮮度は注意すべきポイントです。
③深煎りをすることにより得られるのは焼き芋もような香ばしさ。これは植物の種子であるコーヒー豆に長時間熱をかけることにより得られます。また雑味があればマスクすることが出来ます。
では深煎りすることにより失うものは、まず嫌われ者の酸味です。世界的にみてスペシャルティコーヒーとして評価される重要なポイントに一つである酸味が消えてしまします。また深煎りすることで生まれる苦味によりスペシャルティコーヒー特有の繊細な個性がマスクされてしまいます。
理由を挙げて考えてみると長年の嫌われ者の酸も、そんなに悪い奴じゃなかったのかもと思っていただけたのではないでしょうか。
嫌いは好きの裏返し、興味の対象でなければ嫌われもしません。しっかり本質が見直されるとコーヒーの酸が人気者になる日が日本でもいつか来るのもしれません。

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