嗜好品と日用品

最近スペシャルティコーヒーショップを冠するお店が増えてきました。
私が初めてスペシャルティコーヒーという言葉を聞いたのは確かアメリカ・シアトルから
スターバックスコーヒーが神戸にやって来た時だったと思います。
何か特別な感じはしましたが、何が特別ののかよくわからなかったことを覚えています。
では、スペシャルティコーヒーとは何でしょうか。
実は国際的にはっきりとした定義があるわけではありません。
以下はSCAJ(一般社団法人日本スペシャルティコーヒー協会)のスペシャルティコーヒーの定義です。
“消費者(コーヒーを飲む人)の手に持つカップの中のコーヒーの液体の風味が素晴らしい
美味しさであり、消費者が美味しいと評価して満足するコーヒーであること。”
から始まり、以降それを実現するための要件が続けられています。http://www.scaj.org/about/specialty-coffee
SCAA(アメリカスペシャルティコーヒー協会)では既定の採点フォームにより生豆及び
焙煎豆を評価して基準点数以上の得点を得たものをスペシャルティコーヒーと呼んでいます。
これは鑑定技能を認められたカッパーと呼ばれる有資格者が採点にあたります。
ヨン様が先日取得したQグレーダーとは、その鑑定技能者の資格です。
私のお店、カフェラヴニールではスペシャルティコーヒーを
「生産地域の気候や土壌、生産者が作り出すユニークな風味特性を愉しむ新しい嗜好品のカテゴリー」
と定義しています。
従来の「苦い」「酸っぱい」「重たい」「軽い」で表現されたコーヒーとは違い、それぞれのコーヒー豆の個性に由来するチョコレートやフルーツ、ハーブやスパイスのような風味を愉しむ事が出来ます。またその年のそのコーヒーという一期一会の面白さもあります。
原産国だけでなく生産地域や農園と収穫された範囲を狭めていけばその個性をより強く感じられることになります。
コーヒーでこんなことを言っても少し分かりにくいのですが、
身近なお米に置き換えると
①日本産米、②新潟県産米、③新潟県魚沼産米、④新潟県魚沼地区○○さんが作ったお米
とならべるとどれを買って食べたてみたいかのイメージがわくのではないでしょうか。
それに対してコマーシャルコーヒーとは、均一性を目指した一定レベルの維持を目指したコーヒーのこと。指定されるのは大きくは原産国とその国の基準の等級です。等級とは主に粒の大きさや、栽培地の標高の高さで決まります。毎年毎年同じような味わいという安心感があります。
均一性の追求を目指したコーヒーなのでコモディティコーヒーとも呼ばれています。
(ブルーマウンテンやハワイコナなどは付加価値型コーヒーとしてプレミアムコーヒーと呼ばれています)
スペシャルティコーヒーとコモディティコーヒー、目指すところこそ違うものですがどちらが正しいということはないと思うのですが違うカテゴリーとして認識されておらず消費者の間では混同されているのが残念です。
煙草に置き換えると、産地と製法にこだわった葉巻と自動販売機で並んでいる紙巻きたばこが同じカテゴリーで認識されている感じです。
日用品と嗜好品それぞれの良さを認識して愉しむことが、賢く豊かな暮らしの一つの手段ではないかなと思います。

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